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第1回
斬首をめぐって
前編

Text & Photo
by Tsurisaki Kiyotaka
2011年2月12日


死体そのものを自らの表現として選んでしまった世界でも希有な写真家=釣崎清隆。そのライフワークともいえるフォトエッセイ連載が遂に当サイトでも再開。その記念すべき第1回は、他の誰でもない“死体写真家”目線で、斬首と死刑制度を考察してゆく。



Profile
釣崎清隆(つりさき きよたか)。死体写真家・映像作家・文筆家。1966年富山県高岡市生まれ。 慶應義塾大学文学部卒。学生時代より映画制作、文筆活動に従事し、AV監督を経て1994年に写真家としての活動を開始。1995年、NGギャラリーにて初個展。ヒトの死体を被写体に タイ、コロンビア、ロシア、パレスチナなど世界各国の無法地帯や紛争地域を取材し、これまでに撮影した死体は千体以上。現在は『実話マッドマックス』(コアマガジン)『実話ナックルズ』(ミリオン出版)『トーキングヘッズ叢書』(アトリエサード)で連載。著書に『死体に目が眩んで』『ファイト批評』映像作品に『死化粧師オロスコ』『ジャンクフィルム 釣崎清隆残酷短編集』がある。電子書籍写真集『FLESH』が公式ウェブサイト「TSURISAKI.NET」にて発売中。

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朝山裁判長は想像力が乏しいかもしれない。

「死などという退屈なテーマをなぜ選ぶのか?」
 と挑発的で、思い付きだけの浅はかな作家を糾弾、論破して恥をかかせてやろうとする意図が見え見えな観客を、質疑応答で相手にした。2008年にロッテルダム国際映画祭で拙作『ジャンクフィルム 釣崎清隆残酷短編集』を上映した際のことだ。
 作家にこんな無粋な質問をするような田舎者は欧州ではあまり見掛けない。果たして彼は米国人だった。だいたい面白ければ何でもいいという感覚が馴染まない田舎者の僕が、〝死が退屈〟といういかにも都市のインテリ好みな論調に対する答えを用意していないはずがあるだろうか? 世に問うからには自分は正義だと信じている。こう答えた。
「アルカイダの情報戦略を挙げるまでもなく、死者のイメージは忌々しいグローバリズムと戦う上でこれ以上ない言語であり、表現、テロの手段です」
 ばかな米国人はともかく、日本の知識人も、グローバリズムをいまだに信奉し、オサマ・ビン・ラディンは地獄に落ちるだろうと信じている。
 想像力の欠如は人類の罪であり、ましてや表現者にとっては万死に値する。
2009年6月にマージャン店経営をめぐるトラブルから男性二人をホテルに監禁、1,340万円を奪って殺害し、遺体を切断、横浜港に遺棄したなどとして、強盗殺人罪など9つの罪に問われていた住所不定、無職、池田容之被告(32)の裁判員裁判の判決公判が昨年11月16日、横浜地裁で開かれ、求刑通り死刑が言い渡された。
 この事件は2009年8月に始まった裁判員裁判における初の死刑判決となった。無期懲役判決となった東京耳かき店員ストーカー殺人事件に続いて死刑求刑は2例目であったが、死刑判決が出にくくなることを危惧した司法側が裁判員にぶつけたのは、命乞いするマージャン店経営者(当時28)の首を生きたままチェーンソーで切断するという、この国には珍しい残忍な手口であった。池田容疑者を死刑にしないでいったい誰を死刑にするというほどの文句なしの非道であるが、できることなら死刑判決を忌避したい裁判員を追い詰める司法側のやり口も相当に汚い。朝山芳史裁判長は「人間が想像しうる殺害方法で最も残虐。酌量の余地はない」と断罪した。
 ところで南米コロンビアの反共麻薬マフィア、AUC(コロンビア自警軍連合)の頭目カルロス・カスタニョは年間1,000人の殺人をノルマとしており、その最もありふれた手口が実にチェーンソーによる生きたままの斬首である。その他、生き埋めや火あぶりなどによる1日平均13人の虐殺や拷問、レイプは対共産ゲリラの〝汚い戦争〟を遂行するカスタニョにとって創造性溢れる「都市ゲリラの日課」であった。
 また、現在泥沼化の様相を呈しているメキシコの麻薬戦争において、敵の首を刎ねて見せしめに曝すことが頻繁に行なわれ、その画像や動画がネット上を賑わしている。これはイスラム過激派のメディア戦略から想を得たといわれ、メディアを通じて両者にただならぬ野蛮の激震的共鳴が起こった。シナロア・カルテルや湾岸カルテルは構成員を枢軸関係にあるイラン軍の軍事訓練に送り込み、斬首の本場の流儀を必須で学ばせるのだという。マフィアがイスラム過激派の流儀をパクって戯れにやってみたどころではなく、実は確かな技術であり、恐ろしく手の込んだ戦略だったのだ。
 カスタニョや麻薬カルテルと比べるのはかわいそうだが、横浜電のこ事件判決公判で残虐な殺害方法の限界を規定してしまった朝山裁判長は想像力が乏しいかもしれない。
 鳩山邦夫は法務大臣在任中に平成5年3月の死刑執行再開以降最多の13人の死刑を執行したが、その中には連続幼女殺人事件の宮崎勤もおり、それは鳩山が、わざわざ執行順を繰り上げてまで、自らの手での執行にこだわったものである。男が殺人を犯す理由の大半、それは自己顕示欲である。
 世の中には人を殺しても何とも思わない人間が一定の割合で生まれ、存在する。その一部の実際に殺人を犯してしまった者に対する制裁が死刑だとするならば、その判決に呵責がない裁く側も同罪ではなかろうか。

(後編に続く)

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死体写真家釣崎清隆 新著『死者の書』発売記念イベント
「NIGHT OF THE DEAD」

死体写真家釣崎清隆、「ゴア」を語る。死体をテーマに芸術作品を発表する世界でも唯一無二の存在である釣崎清隆が、3月10日に発売する単行本『死者の書』を自ら解き明かす刊行記念トークイベント。釣崎の写真、映像作品をはじめ、全世界を騒然とさせるグロ画像、動画を解説しながら、多彩なゲストを迎えて死者と踊る夜。なお、当日はサイン会も予定。

出演:釣崎清隆(死体写真家・映像作家)
バクシーシ山下(AV監督)/森下くるみ(AV女優・ 作家)/アイカワタケシ(イラストレーター)/前田亮一(身体改造ジャーナリスト)/曽根賢(〝ピスケン〟『BURST』元編集長)/柴田剛(映画監督)/福田光睦(Modern Freaks Inc.)

開催日時=2011年3月20日(日) 19:30 START(18:30 OPEN)
会場=東京・大久保「ネイキッド・ロフト」tel.03-3205-1556
入場料=¥1,500(前売り)/¥1,800(当日)※共に飲食代別
協力=Modern Freaks Inc.
提供=三才ブックス
釣崎清隆ホームページ