身体改造ジャーナリスト
前田亮一プレゼンツ
3アーティスト
同時写真展
開催記念
“ケロッピー”
前田亮一
&
服部俊幸
インタビュー03
今こそ、
語られない写真へ。
by Mitutika Fuku
Photo
by Ryoichi "Keroppy" Maeda
& Jerome Abramovitch
2009年9月5日収録
Profile
ケロッピー前田(まえだりょういち)
1965年生まれ。フリーランスのライター/フォトグラファー。“身体改造ジャーナリスト”とも呼ばれる。千葉大学工学部卒。白夜書房(コアマガジン)勤務を経て独立。1990年代より『BURST』誌(コアマガジン)にてタトゥー、ピアッシング、身体改造、フェティッシュの最前線を国内外で取材。現在は『TATTOO BURST』『BUBKA』(ともにコアマガジン)などで活躍中。著書に『SCAR FACTORY』(英クリエイションブック)、訳書に『モドゥコンブック日本語版』(フューチャーワークス)など。
きたるというか明日9月18日(金)から1週間ほど、東京・大久保のアンダーグラウンド&ストリート・カルチャー発信源「ゲトー」内の「百ギャラリー」にて、3人の写真家たちによる写真展が同時開催される。そのプロデューサーを務めるのは本ページでもおなじみのケロッピーこと前田亮一氏。その企画の真意とともに、日本初登場となる写真家、ジェローム・アブラモビッチ氏について、前田氏の口から語ってもらった。果たして、前田氏のいうところの《語られない写真》を語ることはできるのか!?
ケロッピー前田写真展『サスペンション考/ホルマリン景』よりホルマリン漬けのメス。
ケロッピー前田プレゼンツ《語られない写真展》
――では今回の個展についてお聞きしたいのですが。
前 さっきも言ったけど、僕はいつも雑誌用に撮っている写真からセレクトして作品として発表してきたけど、今回のニューヨークでは純度の高い作家経験をさせてもらったので、それをうまく「ゲトー」で活かせたらなって思ってます。
ケロッピー前田写真展『サスペンション考/ホルマリン景』より『デパートメントH』でのサスペンション写真。
――今回の展示に関しては作家さんとしてだけでなく、プロデュースする立場でもありますよね。
前 そうだね。ケロッピー・プレゼンツってなってるしね。だから、ニューヨークで作家として求められた部分を、服部くんやジェロームにバンバン厳しく要求していこうかなと(笑)。
――なるほど(笑)。では今回の3人展で目指すものとはなんですか?
前 《グループ展にしないで、3つの個展を同時にやる》ってことかな。バトルロワイヤルみたいになればいいな、と。協調しなくていいっていう前提で、戦わせたいんだよね。
――必要以上に共通項は求めないと。
前 なんとなくうっすらと流れている共通点はあるんだけどね。
――作品というよりは活動場所で近い部分もある3人ですしね。
ジェローム・アブラモビッチ写真展『RETROSPECTIVE ONE』より。隻眼の男性のポートレート。
——では、この辺でジェローム・アブラモビッチ氏について紹介していただけますか? 僕が知っているのは「『モドゥコン・ブック』の表紙の人」ってことだけなんですが(笑)。
前 あの時(2008年)はまだプロではなくて美大生だった。写真はもうやってて。
――あのオデコへの生理食塩水注入(セイリーン・インフュージョン)のアイデアは……。
前 彼のアイデア。ギネス・ブックにも載ってるよ。
――えっ、そうなんですか!
前 彼が学生時代に撮ってたのはセルフ・ポートレートが多くて、それがあの表紙に繋がってるんだよね。そのころの写真は“こいつは変態じゃん”って感じのセルフ・ポートレートばっかり撮ってるんだよ(笑)。
――そもそも、身体改造の実践者なんですか?
前 もちろん。インプラントもしてるし、指も切断してるし。かなりグレードの高い実践者だよ。いろいろな改造を経たあとに、新しいものとしてセイリーン・インフュージョンに行き着くわけ。
ジェローム・アブラモビッチ写真展『RETROSPECTIVE ONE』より。
――なるほど。そして現在はプロのカメラマンなんですね。
前 そう。バイク(自転車)のメッセンジャーやフェティッシュ、身体改造なんかを作品として手がけているね。
――全部モノクロなんですか?
前 いや、カラーも撮っているよ。大雑把に言うとさっき言った3つのジャンルを撮っているんだけど、まだどういう作品を持ってくるのかわからない(笑)。
――そこはさすが外人ですね(笑)。
前 というか、彼にとっても、今回の日本が本当の意味での作家経験になるんじゃないかな。まぁ、いろいろと世話がかかるところもあるけどね(笑)。
――プロデューサーも大変ですね(笑)。では最後に、今回のイベントでの目標を教えてください。
前 この写真展がおもしろいのは、ひとつの場所で3つの異なる写真展が観られること。そうすることによって単独で観た時とは違ったものが見えるんじゃないかって思ってるんだよね。
――作家それぞれが自由に表現するわけですし、当日にならないとわからないところもありますよね。
前 そうそう。あとは『BUBKA』コアマガジンの記事でも書いたんだけど、《語られない写真》って考え方。いま若い写真家たちが撮ってるのは語られたい写真だという気がしてて、要するに写真論に迎合する写真というか。
――アウトサイダー的な表現を目指すということですか?
前 アウトサイダーを目指すというより、最初から他の人が撮っていないものを追いかけているから、純粋な写真表現ができるんじゃないかなって。だから、今回の人選は語られない写真を撮っている人たちの作品を、純粋に観て欲しいということなんだよね。
――そういう意味ではストイックですね。
前 今年になってから、ニューヨークや東京での写真展に向けて、自分なりに写真史を整理して見直してたんだけど、写真におけるピュアなものがなくなってきてる気がしてるんだよね。これは誰が撮ってる、これは誰が撮ってるって、それを避けてマスを埋めてくような流れになってきてる気が……。
――そういう考え方から外れることが語られない写真だと。
前 《一回ジャンプして、全然違うところから戻ってきた瞬間に、自分の目の前にあったものをただ撮る》という、そういうような意識でできれば、写真論に迎合しないようなものが撮れるんじゃないかな。それが何か“人の心を動かす写真”であると思っているんだよね。
——ではそれを楽しみに、当日会場にうかがってみます。今日はありがとうございました。
ケロッピー前田氏近影(福光睦撮)。
(終わり)
ケロッピー前田プレゼンツ/3アーティスト同時写真展
服部俊幸写真展『八百万』
ケロッピー前田写真展『サスペンション考・ホルマリン景』
ジェローム・アブラモビッチ写真展
『CHAPTER9 PHOTOGRAPHY RETROSPECTIVE ONE EXHIBITION』
会期=2009年9月18日(金)〜24日(木)
時間=12時〜20時
会場=東京・大久保・「百ギャラリー」@ゲトー




