maeda02 of Modern Freaks Web Ver.0.9

日本発ハードコア
ドキュメンタリー
『Body Modification Freaks』完成秘話。
“ケロッピー”
前田亮一
との対談02

身体改造
先進国の証明。

Photo by Ryoichi "Keroppy" Maeda
Text by Hiroshi Suzuki
2009年1月某日収録






Profile
ケロッピー前田(まえだりょういち)
1965年生まれ。フリーランスのライター/フォトグラファー。“身体改造ジャーナリスト”とも呼ばれる。千葉大学工学部卒。白夜書房(コアマガジン)勤務を経て独立。1990年代より『BURST』誌(コアマガジン)にてタトゥー、ピアッシング、身体改造、フェティッシュの最前線を国内外で取材。現在は『TATOO BURST』『BUBKA』(ともにコアマガジン)などで活躍中。著書に『SCAR FACTORY』(英クリエイションブック)、訳書に『モドゥコンブック日本語版』(フューチャーワークス)など。

日本のボディ・アート・カルチャーを牽引した雑誌『BURST』を中心に、数々のハードコア・カルチャーを追い続けてきたケロッピー前田こと前田亮一氏。今回の前田氏と福光睦との対談第2回では、この“身体改造”という新しい文化が、現在の日本社会にどのような形で拡がりつつあるのかが話題に。そして、改めて“身体改造”という行為自体を定義してゆくことに。


maruko.sus.jpgTHEフッカーズによるスーサイド・スタイル・サスペンション実演。『DEPARTMENT H 2099』より。

世代交代。悩みの違い。


——身体改造の取材をするようになっていって気付いたんですが、個人的な施術とかは、昔からあったと思うんですが、最近の傾向としては、フェティッシュ・パーティのシーンとうまく結びついていますよね。

「特にサスペンション(*1)は、わかりやすいんだよね。“見る身体改造”というか、その技術を利用したショーとして、わかりやすい」

——以前は海外のアーティストやパフォーマーが来日し、ショーというかたちで披露していましたよね。この状況を第一段階とするならば、『Modern Freaks(モダン・フリークス)』や今回のDVD『Body Modification Freaks(ボディ・モディフィケーション・フリークス)』にも収録されている「プロが愛好者たちに、サスペンションの経験をさせる」という今の状況は、第二段階と呼べますね。

「特に東京の《THE フッカーズ》、大阪だと《BABYLON(バビロン)》というサスペンション・チームが活動してるっていうこともあって、サスペンションのシーンが日本で盛り上がってきてるのが面白いよね」

——そういう点でサスペンションも、一般化が進んでいるんですか?

「そうじゃないかな。サスペンションを希望する人たちや見たい人たちがいるから、そのニーズに応えるという現状があると思う」

——少し前なら日本人から見たサスペンションは「わぁ、できねぇよ」「わぁ、すげぇな外人」みたいなレベルだったじゃないですか? でも「こんなことやって大丈夫なの?」ってことが、ここ1~2年で、できるようになってきてますね。このあたりの要因はどういうところにあると思われますか? 

「世代交代っていうのかな。それはタトゥーやピアスでもあったけど、最初はそれ自体をするかどうかで悩んでたのが、“どこにピアスをするか”“どんなタトゥーをするか”で悩むようになる。今、サスペンションも“吊るか・吊られるか”を悩むんじゃなくて、“もっと違う吊り方はできないか?”というレベルに移行している」

——「スーサイド(*2)じゃないやつでお願いします」というような話ですね。

「まさにそういうところだよね。“曲とかリクエストしていいですか?”とかね(笑)。やる・やらないの問題じゃなくて、今は“吊られるとしたら、こうやって吊られたい”みたいなところがポイントになっている」

——身体改造文化に初めて接触する時、第一に思うことが、前の世代とは違うんでしょうね。

「無理って人は当然、最初から入ってこないんだけど、悩むって人がいるよね? 悩む人たちがもう、別の次元で悩んでる。やる人は初めて見た時にもう、サスペンションをすることは決まっていて、あとは、いつ、どんなふうにやろうかなっていうのを考えているだけだと思うんだ」

——本当に、タトゥーとかピアスの話と一緒に考えるとわかりやすいですよね、昔は“親に相談して”とか、“親に勘当されてまで”入れるという世界でしたし。

「何かしようと悩んでる人はそれをやりたいんだよね。ただ、やるという決心をさせるためのストーリーが必要なんだと思うよ。その点でいうと身体改造には、いろんなストーリーが準備されてるから、改造を実践するきっかけは、本当に人それぞれだと思う」



mimi.jpgフィンランドの改造アーティスト=サンパ・フォン・サイボーグによるイヤーポインティングの施術後の耳。

身体改造とは。

——では、そもそも、タトゥーやピアスと身体改造の違いはどの辺りにあると思われますか?

「それは難易度が高いというところかな。身体改造は本来、ピアスやタトゥーも含めた総称としてのボディ・モディフィケーションを日本語に訳して“身体改造” と呼んでるんだけれど、実際には、ピアスとかタトゥーの範疇よりも、もっと難易度が高い。というのも、治りに個人差があったり、誰にでも勧められなかったり、あとアフター・ケアに時間がかかったりするという理由で、誰でも身体改造を実践できるわけでもないんだよね。“身体改造”というのは本来、ピアスやタトゥーも含めたものの総称のはずが、日本でも難易度の高い改造を指す言葉になっちゃっているよね」

——スプリット・タン(*3)も昔はギョッとしたものだったのに、映画化もされた小説『蛇にピアス』の影響で、今ではポピュラーな身体改造の一つですよね。

「一般的な認知度が上がったのは事実だよね。でもあの小説だけでしか身体改造を知らないという人もいると思うんだけれど、そういう人の中には小説で行なわれている改造行為をフィクションだと思っている人がいる可能性もある。スプリット・タンが本当に存在するのかどうかって、理解できない人がいるかもしれない」

——例えば、スプリット・タンをして舌が慣れてくると、左右に別れた舌を交互に動かすことができる、というリアルなディテールは小説には出てこない。それにしても、スプリット・タンは最近、身体改造の取材をしていても聞かないですね。やってても言わないくらいのものになってるんですかね。

「そうだと思うよ。でも最近の傾向として、今になってピアスに戻る人も多いんだよ。前に完成していたベーシックなピアスを、難易度の高い改造を経た現在の技術で、より完璧に完成させるっていう人たちもいるよ。だからピアスに戻っているファンもいる」

——あと、同じことをやるのでも、いろんな技術がありますよね。例えば、今回のDVDに収録したイヤー・ポインティング(*4)の場合でも、最初に始めた人とサンパの施術が難易度もやり方も違ったりとかして。そういう改良の余地があるのが、今、身体改造文化が加熱している点のひとつだと思いますね。

「“身体改造アーティスト”と呼んでいるのは、作家性が高いからであって、それぞれの人たちのやり方や、使う道具や、使う素材であったり、アーティストそれぞれの選択があって、そういう点でやっぱり改造を希望する人はアーティストを選ぶ。誰が一番ではなくて、やっぱり研究段階であったり、実験段階でもある。でも、逆に施術をしてもらう人が、今までになかった改造を相談することができるっていう部分も特徴的だよね」

(続く)

*1……かぎ針のようなフックを皮膚に直接突き刺し、体全体を宙に吊り上げるパフォーマンスの総称。
*2……サスペンションのスタイルの一つ。背中上部にフックを通し、垂直に吊る。首吊り自殺した人のように見えることから”スーサイド(自殺)”サスペンションと呼ばれる。
*3……舌を先端から縦にまっぷたつに切開する施術。リザードマンと呼ばれる「トカゲになりたい」改造マニアが、医師に相談して開発したと言われる。
*4……耳の軟骨を切り抜くことによって耳の先端を尖らせる施術。身体改造のなかでも、非常に技術的難易度が高いといわれる。

BMFパッケージ.jpg

ケロッピー前田監修/Modern Freaks制作DVD
『Body Modification Freaks(ボディ・モディフィケーション・フリークス)』
〜知られざる身体改造先進国日本

定価=4,743+税
収録120分(本編60分+特典映像60分)
2008年11月発売
ワイレア出版
予告編/Sample Movie
当サイトでも販売中。国内送料無料。