『エロスの原風景』
刊行記念
松沢呉一
インタビュー02
集大成の
エロ本クロニクル。
by fukumitutika(Modern Freaks)
2009年6月某日収録
Profile
松沢呉一(まつざわくれいち)
1958年生まれ。ライター。現在は、月刊『実話ナックルズ』(ミリオン出版)、『スナイパーEVE』(ワイレア出版)、『お尻倶楽部』(三和出版)等の媒体に連載中。その他著書として、『風俗お作法』(しょういん)など。自ら有料メルマガ『マ
ッツ・ザ・ワールド』を配信。ちなみに、『エロスの原風景』は『実話ナックルズ』の連載を大幅に修正・加筆して構成したもの。
風俗産業、アンダーグラウンドカルチャーからスーパーマーケット、さらには古書まで、その無闇とまで思われるほどに広い博識で名を馳せるライターの松沢呉一氏。彼はまた、日本最大級の各種エログロ誌を所有していることでも知られている。そしてこの2009年7月、彼が莫大な時間と労力、そして私財を注ぎ込んだコレクションが遂に単行本『エロスの原風景』として結実した。その完成を機に、新刊単行本についての話を伺う予定だったが、なぜかカムジャタンの話に終始。今回こそは肝心の告知エピソードが飛び出すのか!? それともやはり……。
松沢氏の熱い論弁が炸裂する宋家ガムジャタンの外観。カムジャタン到着は、まだなのか。
その前に、 書評の話。
――カムジャタンの話やガーナの話をいくらやっても、本の宣伝にならないですよ。
「いやいや、同世代ならともかくとして、ワシのことなんて、若い世代は誰も知らないから、どんな人間かわかってもらわないと、本の購買に至れないだろ」
――ガーナの女子高生とチャットをやっているおじさんだとわかっても、本の購買には至れないと思いますけど。
「それもそうか。今日は提灯や団扇や暖簾や石灯籠の研究成果も熱く語ろうと思っていたんだが、しても無駄か」
――たぶん。
「つまんないけど、本の話でもするべ」
――本の宣伝用インタビューなのに、「つまんない」って(笑)。その前に、自分で自分のインタビューをしようと思った事情を教えてください。
「昔はさ、本を出せば必ずと言っていいくらい、どっかの雑誌がインタビューをやってくれていたもんだ。三沢光晴がまだ現役だった頃のことだ」
――つい数日前まで現役ですよ。
「プロレスのことはよくわからん。でも、性風俗産業に特化した本を出すようになって、徐々にそういう機会がなくなって、書評も出なくなってしまった。自分が連載している雑誌でさえも出してくれない。出してくれるのはエロ本だけ」
――『アサ芸』は?
「ずっと連載していたのに、一度として書評欄に出してくれたことがなかった。連載している間に5册か6册出たと思うが、連載をまとめた本が出た時でさえ出してくれなかったので、自分のページで告知した。書評欄に出るより、自分のページで告知した方が効果があるから、それでいいんだけど、気分はよくない。『アサ芸』の書評欄では、読者が『アサ芸』に期待しているものは掲載されにくいとしか思えない。オレの本が読者に期待されているっていうんじゃなくて、エロ一般ということだけど」
――ビジネス書だったり、普通の文芸書だったりが取りあげられてますよね。
「それも需要があるんだろうけど、結局、ああいう雑誌は売れるからエロをやっているだけで、エロに対する思い入れなんてないんだと思う。わかりやすい言い方をすれば、『風俗ライターの本なんて取りあげられるか』って意識がどっかにある、少なくとも書評担当は。連載している人の本や自社の本を優先して掲載すると信頼度が落ちるということであれば立派だけど、たぶん違う。単につまらないと判断された可能性は否定はしないが、書評担当は読んでさえいないだろ」
――『本当はこんなものをオレはやりたいわけじゃない』って思いながらエロ本をやっている編集者とかライターっていますよね。
「いるね。はっきりそう言っているのまでいる。とくに大きい出版社だと、人事課の判断でそういう雑誌に回されるだけだしね。『本来オレは政治問題を担当すべき人材』と思っている連中は、せめて書評だけでも、そういうものを取りあげたいんじゃねえの、知らないけどさ。その点、エロ専門出版社のエロ本だったら、覚悟ができていたり、エロに対するプライドがあったりするので、そういう雑誌の編集者の方がオレは信頼できる」
――それは僕も感じます。僕がワイレア出版にいた時も、一般の雑誌やテレビからの問い合わせには冷たくしてました。信用できないので。店や人を紹介すると、あとでこっちにクレームが来たりしますし。
「そういえば、君らのせいで、オレもひどい目に遭った。女性誌から『S&Mスナイバー』に問い合わせがあって、編集者がオレにふりやがって、案の定トラブった」
――僕は関係ないですよ。
「うん、Tの仕業だ。エロの宿命だからしょうがないけど、そのくせセックス特集だのSM特集だのをやって部数を増やすことには利用するから腹が立つ」
――バカにしているんだったら、取りあげるなと。取りあげるなら、ちゃんとやれと。
「そういうメディアの体質がもっとも出るのは、規制に対する姿勢。たとえば、どこかの風俗店が児福法違反容疑で摘発されるとする。スポーツ新聞や週刊誌は、そういう店を叩くわけだが、店が女の子に騙されているケースも多いのに、そういうことは全然取材しないで、警察発表をそのまま報道して、店がいかにもひどいかのように報道する。叩かれていい店もあるのも事実だし、一貫して風俗産業に冷淡な雑誌がそういう報道をするのはしゃあないと思うけど、日頃、さんざん風俗店の記事を掲載しているんだから、『この法律はおかしいんじゃないか』『この摘発はおかしいんじゃないか』って視点があってしかるべき。そういう視点があるのは『週刊プレイボーイ』くらいだと思う」
――ま、エロ本にもそういう視点はないですけどね。
「そういう視点をもったら、警察に目をつけられて潰されるから。でも、そういう時に、風俗情報誌だったら、さすがに叩かないし、触れない。そこはギリギリの判断力が働いている。週刊誌やスポーツ新聞の一貫性のなさは、担当が違うためだったりもする。特集担当とか社会部は、自分らが風俗店の情報でメシを食えている自覚がないし、風俗店がどういう法律でどう規制されているかの知識もないんだと思う。『そんなもんをオレ様が調べてたまるか』と。そこまで意識さえできていないのが大半だろうけどね」
(続く)



