matsuzawa11 of Modern Freaks Web Ver.0.9

『エロスの原風景』
刊行記念
松沢呉一
インタビュー11

集大成の
エロ本クロニクル。

Interview
by fukumitutika(Modern Freaks)
2009年6月某日収録






Profile
松沢呉一(まつざわくれいち)
1958年生まれ。ライター。現在は、月刊『実話ナックルズ』(ミリオン出版)、『スナイパーEVE』(ワイレア出版)、『お尻倶楽部』(三和出版)等の媒体に連載中。その他著書として、『風俗お作法』(しょういん)など。自ら有料メルマガ『マッツ・ザ・ワールド』を配信。ちなみに、『エロスの原風景』は『実話ナックルズ』の連載を大幅に修正・加筆して構成したもの。

ネットの作法、アンダーグラウンドカルチャーから奇形、さらには東村山問題まで、その無闇とまで思われるほどに広い博識で名を馳せるライターの松沢呉一氏。彼が、日本最大級の各種エログロ誌蒐集家であり、彼が甚大な時間と労力、そして私財を注ぎ込んだコレクションが遂に単行本『エロスの原風景』として発売中。その完成を機に、新刊単行本についての話を伺うつもりが、出版という産業全体を語ることに。そしていざ本を売るにはの話に突入するも、出てきたのは松沢氏の女性の好み……!?


jukujo.jpg本文中にも登場する松沢氏の名著『熟女の旅』(ちくま文庫)。1998年に初版が刊行された昨今の熟女ブームの先駆けです。

ベストセラーへの道


——こういう時代に出版社は何をすればいいんでしょうね。

「確実なのはタレント本を出すことだろ」

——そういう展開なんですか? 『エロスの原風景』からどんどん話が離れますけど。

「出版界全体の行方を語っている時に、そんなしょぼい本の話を持ち出すなよ(笑)。本の宣伝で言えば、雑誌の書評に出るより、テレビに出た方がずーっといい。時間差だって少ない。かといって、本そのものを取りあげてくれる番組はほとんどないから、タレント本をどこも出そうとする」

——タレントだったら広く一般の人にも名前が浸透している上に、テレビで自分の本を宣伝してくれますもんね。

「出版界で知名度があっても、お茶の間には浸透してないから、万単位で本を売るには、タレント本がもっとも近道。今だとお笑い芸人が次々出している。サイン会や記者会見をやれば、『ミヤネ屋』やスポーツ紙が大きく取りあげてくれる。うまくすれば十万部単位で売れる。うまくすれ100万部か。『ホームレス中学生』みたいに」

——ホームレスといえば、うつ(うつのみや八郎)さんは、映画『ホームレスが中学生』に主演したのに、何ひとついいことがなかったらしいですね。タコ部屋に居合わせた中国人にチラシ見せたらちょっと一目おかれたらしいですが(笑)。

「仕事が一本たりとも増えなかったばかりか、まだギャラももらえてないって言ってた。『ホームレス中学生』じゃなくて、『ホームレスが中学生』だから。主演といっても、顔もわからないホームレス役だしさ」

——「映画の主演だ」っていうから、ブレイクかって期待したんですけどね。

「製作会社は、宣伝費がない中で、なんとか『ホームレス中学生』のおこぼれを拾おうとしたんだろうな。実際、ちょっとは取りあげられていたし。出版界も一緒で、売れているタレントのおこぼれをもらうしかないってことさね。苦々しい思いがないとは言わないが、これれだけ本が売れない時代に、そうなるのは当然だと思う。芸能人の場合は、事務所の力が強くて、売れている人に関しては、印税も12%とか13%は出していそう。旬のタレント本だったら、初刷りから万だろ。だったら、それだけ払っても利益は出る。写真集はもう売れなくなっているけど、なんでもいいから、本が売れていてくれないと、出版社も取次も書店も維持できない。タレント本とかケータイ小説は、ふだん本を買わない層を本屋に呼び込んでいるので、そういうものを頭ごなしに否定する気にはなれんのだよ」

——僕らの周りの芸人さんたちがブレイクしてくれると、おこぼれをもらえるかもしれないんですけどね。

「そうそう。荷物を持って、こづかいをもらったり」

——そういうことじゃなくて、彼らの本の編集やったり、ゴーストやったりですよ。

「そういうことをタダで手伝って、メシをおごってもらいたい」

——志が低すぎますよ。タレントの本が売れるんだったら、松沢さんもタレントになればいいんですね。

「それはいいアイデアだ」

——素直に受け入れられるとは思いませんでした。

「オレがタレントになった暁には、南明奈とスキャンダルを起こして、その弁明会見で本の宣伝をしたい」

——アッキーナとスキャンダルを起こしたいんじゃなくて、本の宣伝がしたいと。

「スキャンダルも起こしたいけど、メインは『エロスの原風景』の宣伝だ。相武紗季ともスキャンダルを起こしたい」

——『熟女の旅』を出している人がアッキーナ相武紗季じゃ、イメージダウンですよ。

「あの本は、オレが熟女マニアって話じゃないぞ。現在、某誌の編集長をやっている人物が主人公だ。対してオレは20代後半から30代がストライクゾーン。それにしたって、アッキーナ相武紗季は若すぎるが、あと10年寝かせると、もっといい女になる」

——10年も寝かせると、松沢さんの方が朽ち果ててないですか。

「たしかに。だったら、最近コマーシャルによく出ている女優の水川あさみ。20代後半だろ(※26歳)。オレが好きな年頃だ。彼女ともスキャンダルを起こしたい」

——ちょっと前に、早見優が好きって言ってませんでしたっけ。

「あの歳であのルックスを保っているのはたいしたもんだなと思ってさ。早見優なら『熟女の旅』のパブリックイメージにも合うだろ」

——向こうのパブリックイメージには合わないと思いますけど。

「そこが狙い目。スキャンダラスだ。不倫会見が楽しみだ。本を売るためなら、なんだってするよ」

——なんだってするってわりには人選に趣味が入ってますよ。

「そこは譲れない。山田優とスキャンダルを起こせば、小栗旬も出てきて、記者会見はなおのこと盛り上がる」

——そろそろ好きなタレントの名前を列挙するのはやめていいんじゃないですか。

「もうちょっと続けたかったな。人の心と体を弄びつつの大規模な宣伝計画に比べると、地道に本を売るなんてバカバカしくてやってらんないよ」

——そういう偉そうな発言は、人の心と体を弄びつつの大規模な宣伝計画を一回でも実現してから言った方がいいんじゃないですか。

「そうするよ、頑張ってみるよ。ここまでの話をまとめると、タレント本や、テレビや映画がらみじゃない本の宣伝は難しくて、有料広告を一切出さない出版社も多く、書評担当に本を送るだけ。ツーカーだったら、電話一本入れたりするけど、それでおしまい。費用対効果を考えると、これがもっとも合理的な方法なんだと思う」

——アッキーナとスキャンダルを起こせない以上はそうでしょうね。

「起こしてえ。日テレの『秘密のケンミンSHOW』の中に『転勤ドラマ』ってあるじゃないか」

——よく知らないですけど。よくテレビを観てますよね。

「うん、去年までの5年くらいはテレビを一切観てなかったから、遅れを取り戻すのに必死だよ。『転勤ドラマ』に出ている若妻役の女優とスキャンダルを起こしたい」

——まだその話ですか。誰ですか、その女優って。

「知らない。テレビ情報に欠落のあるオレが知らないだけかもしれないけど、そんなに有名な役者じゃないと思う。たぶん再現ドラマに出ているような役者じゃないか」

——そんな有名じゃないんだったら、話題にならないですよ。

「目的と手段をはき違えて、好きなタレントの話をしてしまった」

——タレントになったら、なにもスキャンダルにしなくても、自分で素直にテレビで宣伝すればいいじゃないですか。

「ホントだ。タレントの自分に慣れていないので気づかなかった」

(続く)

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松沢呉一『エロスの原風景』
江戸時代〜昭和50年代後半のエロ出版史 

定価=2,800+税
ISBN978-4-7808-0126-2 C0095
A5判 / 168ページ / 上製・函入り
2009年07月刊行
ポット出版