matsuzawa20 of Modern Freaks Web Ver.0.9

『エロスの原風景』
刊行記念
松沢呉一
インタビュー20

集大成の
エロ本クロニクル。

Interview
by fukumitutika(Modern Freaks)
2009年6月某日収録






Profile
松沢呉一(まつざわくれいち)
1958年生まれ。ライター。現在は、月刊『実話ナックルズ』(ミリオン出版)、『スナイパーEVE』(ワイレア出版)、『お尻倶楽部』(三和出版)等の媒体に連載中。その他著書として、『風俗お作法』(しょういん)など。自ら有料メルマガ『マッツ・ザ・ワールド』を配信。ちなみに、『エロスの原風景』は『実話ナックルズ』の連載を大幅に修正・加筆して構成したもの。

古書、各種新興宗教団体から新宿2丁目、さらには韓国料理店でイイ感じにカムジャタンを食べる方法まで、その無闇とまで思われるほどに広い博識で名を馳せるライターの松沢呉一氏。彼が、日本最大級の各種エログロ誌蒐集家であり、彼が甚大な時間と労力、そして私財を注ぎ込んだコレクションが遂に単行本『エロスの原風景』として好評発売中。その完成を機に、新刊単行本についての話を伺うつもりが、出版という産業全体を語ってゆく長い長い講義に。そしていざ本番という流れにきて、松沢氏が決定的に忘れていたことが頭の中に復活! それはそれで楽しい情報なのだが、やっぱこれってまた遠回り……という最後の20行くらい読めばなんの問題もなく次の回に進める愉快なお話!


お笑い放送禁止劇場表紙.jpg松沢氏最新原稿情報! 本日9月11日(金)発売のお笑いムック『放送禁止劇場』(晋遊舎)でYouTubeネタの原稿とChim ↑Pomインタビューが掲載中! ちなみに我が編集部の編集によるわりとおもしろい一冊です。

そろそろ本格的に……カムジャタンの話。



——フジテレビで深夜やっている『FNS地球特捜隊ダイバスター』もバカでタメになります。

「ダイダイダイダイ、ダイバスタ〜♪ 福くんに教えてもらって、オレも好きになった。あの番組はテレビの未来を見せてくれている。製作費は極限まで少ない。有名な人は誰も出ていない。それでも、おもしろく見せる工夫をしている。ああいう番組が出てきたのは、テレビ業界が厳しいからだ。そうなればそうなるほど、考えなきゃいけなくなる。この時代に見事に対応したのがあの番組だな」

——けっこう前からやってるんですが(2005年放送開始)、他に例がない番組作りですよね。

「他の番組は通販をこまごまとやり、商品開発と称して、公共の電波を使った商売をやったり、局がらみの映画の告知でやりくりしている。あるいは散歩番組のようにスタジオ収録を避けて経費を浮かしたり、グルメ番組のようにタイアップできるものばかりを紹介したり。でも、こういう手法はテレビの信頼性を疑わせる。散歩番組はいいとして、番組内のゼニ儲けはまずいだろ。こういう番組こそ批判されてもいいと思うけど、テレビの構造的堕落は見えにくいから、バカタレントをバカにして批判した気になる。でも、オレは、バカと貧乏で勝負する番組の方がはるかに潔さを感じるし、テレビの未来をそこに見る。だから、本も雑誌も売れない今の時代こそ、出版でもおもしろいことができると思っているんだよ。その時に、インターネットは宣伝媒体として使いでがある。金がなくても、アイデアがあれば新しいことができる。今までのように、受け身で文句を言っていればいい時代ではない。あっ!」

——なんですか。

「カムジャタンのこともインタビューに出るんだよね」

——出ますよ、せっかく専門店にまで来たんですから。

「今回のメインテーマはカムジャタンだからね。オレたちがカムジャタンしか頼んでいないのはいかにも不自然に見えるかもしれない。韓国料理店に来たからには、チヂミやキムチくらい頼まないのはおかしいのではないかとの疑問が読者の頭の中を走り回っているに違いない。こいつらは貧乏かと。その事情を説明した方がいいな」

——何かと思ったら。でも、そうかもしれないですね。カムジャタンのことを知らない人が多いですし、そろそろやりましょう。

「ワシらには金がないのも事実だが、金がないから、他の食い物を頼まないわけではない。もともとこの『宋家ガムジャタン』は日本でほぼ唯一のカムジャタン専門店(*1)だから、他の食い物は充実していないんだが、よくこの店でも、初めて来た人は、他の食い物を頼みがちで、大量に残して帰ることになる。韓国料理店ではいろんなものを頼むのが常なので、気持ちはわかるが、それはカムジャタンのことを知らない素人の発想だと言ってもかまうまい」

——味が滲みるまで時間がかかるので、他のものを食べたくなるのはわかりますけど、そこはグッと我慢でしょうね。

「我慢がうまさを高める。大人数で来ている場合は他のものを頼むのもいいけど、2人だったら、カムジャタンだけにした方が無難だ。見た目と違って、カムジャタンはさっぱりしているので、それだけ食っても飽きがこない。他の鍋とはそこが違う。サムゲタンも好きだけど、それだけで腹はふくれない」

——他のものを食べるんだったら、カムジャタンは小サイズにした方がいいですね。

「どこの店でも、背骨や野菜は追加できるので、小で様子を見た方が金を無駄にしないで済む。大を頼んでも、背骨が多すぎるので、煮込む前にいったん外に出すことが多い。だったら、追加しても一緒なので、小さいサイズで始めるのがオススメだ。日本人経営の店では、追加というシステム自体がなくて、メニューに出ていないこともあるけど、頼めば骨や野菜を追加してくれる」

——まぁそのセコセコした発想が貧乏臭いですけどね。

「墓穴を掘ったか(笑)。でも、カムジャタンだけだったら、たらふく食っても、1人1,000円台。ドリンクを入れても2,000円台。週に2回、3回と食い続けるためにはこういう智恵が必要だ。サイズが細かく分かれていないこともあって、そういう店のカムジャタンはたいてい大。こういう店では、まずカムジャタンを食ってからその後の展開を考えた方がいい。韓国では、カムジャタンは専門店で食べるものだから、他のものと一緒に食べる発想があまりなくて、基本になる量が多いんだろうな」

——本場韓国の専門店も行きたいですね。

「ウォンが安い今がチャンスだ。韓国では、黙っていてもキムチや海苔がついて来る店が多いので、できあがるまでの時間潰しをわざわざ頼む必要がないのもいいね」

——新宿ゴールデン街「モンシリ」はつきだし的なキムチがオールスター的に6種類くらい出てきますからね。

「あれが韓国方式。オレはカムジャタン原理主義者なので、カムジャタンを食べる時は他のものは一切食べないけどな」

——「モンシリ」ではよく食べているじゃないですか。

「カムジャタン原理主義者じゃない日な(笑)。それと『モンシリ』でタダで食べられるキャベツと海苔は絶品だから、あれは例外だ」

——松沢さん、せっかくカムジャタンの話で盛り上がっているところ、大変申し訳ないですが、いったいいつになったら、松沢さんが自分のインタビューをやろうと思った事情の話になるんですか?

「なんだっけ、それ」

——本の宣伝なんですよね、このインタビューは。

「そうだったのか。言ってくれてよかった。このまま放置していたら、あと30分くらいカムジャタンの話をして、次はYouTubeTwitterがどう世界を変えつつあるかの話をするところだった(笑)。話を大幅に飛ばして、本を売るために何ができるかって考えた時に、新聞広告を出す金はない。雑誌も出していない出版社だと、そこでも宣伝はできない。書評を出すために本を送っても掲載されない。書き手がいい文章を書くことで自分を認知させて本を売ろうとしても原稿依頼もされない。アッキーナとスキャンダルも起こせない。でも、インターネットがある時代には、自分で簡単に宣伝ができる」

——やっと話が核心に近づいてきた。

「気を抜くなよ。すぐに話が飛ぶからな(笑)。オレはアフィリエイトをやっていないので、ほぼアマゾンの順位でしか動きがわからないんだけど、たとえば1日のユニークアクセスが1,000を超えているようなプログをやっている人が本を取りあげてくれると、数値に出るくらい動く。1冊でも売れれば数値に出るけど、1冊だと、何の効果か見極めができにくい。1日1冊平均動いている時に2冊売れてもいつものことになってしまうけど、3冊続けて動くと、どこかで誰かが紹介してくれただろうことが想像できる。ネットでは、雑誌の書評ような時間差が生じにくいから、数字に出やすいんだよ。成果が見えるとやる気になる。書評の効果はゼロではないけど、成果が見えないからさ」

(続く)

*1=店名に「カムジャタン」がついた店は他にあるが、カムジャタンをメインにしているだけで、専門店とは言いがたい。しかし、その後、「宋家ガムジャタン」の店主に聞いたところによると、大久保にもう一軒専門店ができたそうである。まだ食べに行ってないので、評価はできず。

前のページへ

次のページへ

978-4-7808-0126-2.gif

松沢呉一『エロスの原風景』
江戸時代〜昭和50年代後半のエロ出版史 

定価=2,800+税
ISBN978-4-7808-0126-2 C0095
A5判 / 168ページ / 上製・函入り
2009年07月刊行
ポット出版