matsuzawa22 of Modern Freaks Web Ver.0.9

『エロスの原風景』
刊行記念
松沢呉一
インタビュー22

集大成の
エロ本クロニクル。

Interview & Photo
by fukumitutika(Modern Freaks)
2009年6月某日収録






Profile
松沢呉一(まつざわくれいち)
1958年生まれ。ライター。現在は、月刊『実話ナックルズ』(ミリオン出版)、『スナイパーEVE』(ワイレア出版)、『お尻倶楽部』(三和出版)等の媒体に連載中。その他著書として、『風俗お作法』(しょういん)など。自ら有料メルマガ『マッツ・ザ・ワールド』を配信。ちなみに、『エロスの原風景』は『実話ナックルズ』の連載を大幅に修正・加筆して構成したもの。

性科学、中国の動画投稿サイト『youku』から舌技、さらには名古屋の変態さんにスカトロ・マニアが多いことまで、その無闇とまで思われるほどに広い博識で名を馳せるライターの松沢呉一氏。彼が、日本最大級の各種エログロ誌蒐集家であり、彼が甚大な時間と労力、そして私財を注ぎ込んだコレクションが遂に単行本『エロスの原風景』として好評発売中。その完成を機に、新刊単行本についての話を伺ってきたが、結局のところ、出版という産業全体を端から端まで検証してゆく長い長い講義に。新刊発売後も長々と続いてきたインタビューも終盤戦なわけで、そろそろ決定的なアピールをしてもらいましょう!



massa.jpgここ数週間、かつてないほどの肩の痛みに悩まされている松沢氏。偶然取材で遭遇したマッサージの上手いマゾ男性に、思い切りやってもらうが未だに完治せず。誰かよい治療法を教えてください。宛先は当サイトまで。

『エロスの原風景』のアピールポイントとは!?



「(店員に)辛くないカムジャタンはムチャクチャおいしいね。人気があるでしょ」

店員「まだ始めたばかりなので、あまり注文する人はいないです。でも、私は好きです」

「食べればわかるので、これから客は増えると思うよ。(福を見て)何事も存在を知らなければ頼めないってことだ。本も一緒さね。韓国ではカムジャタン街があるくらいなのに、日本ではイマイチ人気がない。いざ探すとメニューにある店はたくさんあるんだけど、気づけないから頼めない」

——ゴールデン街のモンシリにはずいぶん通ってましたけど、カムジャタンがあることに気づいてなくて、いつもホルモンばかり食べてました。

「頼む人が少ないと、スープが古くなって味が落ちて、匂いも出てくる。いよいよ頼む人が減る。その悪循環に陥る。オレの本もそうだ。いざ読めばおもしろいのに、おもしろさに気づく契機がない。いざ読まれたらおもしろくなかったりするかもしれないので、読まれていないうちに言っておかなきゃ(笑)。でも、おもしろくないとしたら、時間が経ちすぎて、スープが古くなっているからであって、買うなら最新刊の『エロスの原風景』だ」

——また話が飛んだかと思ったら、ちゃんと戻りましたね。「黒子の部屋」で宣伝することで、どの程度動くんですか。

「まだ具体的な数字はわからないんだけど、何もしない時の数倍は予約をとれているはず。十倍くらい動いているかもしれない(松沢追記)」

——へえ。

「つっても、予約の数は数十だけど、それだけ予約がとれるだけでもたいしたもん」

——2万部の雑誌に書評が出るよりずっと効果があるわけですね。

「繰り返し書いているから、単純な比較はできないけどね。書店員だって、ネットで情報を探すのが相当数いて、書店営業のツールにもなる。雑誌と違って、半年後でも検索で入ってくる人たちもいる。ネットで紹介されると、書評で言えば数十万部の雑誌いくつかに載るのと同じくらいの効果があるかもしれない。ただ、この数字は、“どちらにしても買う読者”が先取りしているだけかもしれないから、いざ発売になるとバタッと動かなくなる可能性もある。それが不安で不安で」

——自分で書くべきことは書いたので、あとはインタビューくらいだと。

「そういうこと。自分のブログでただ書いても客観性というものがない。だったら、インタビューがいいかなと思ったんだけど、インタビューをしてくれる雑誌もないから、これも自分でやればいいかと」

——自給自足みたいな話ですね。

「タコが自分の足を食うような話だ。サルのセンズリみたいなもんかな。インタビュアーくらい担当の高橋君に頼んでもいいんだけど、ネット上で全部自分でやるというのが今回のテーマなので、あえて自分でインタビュアーもしてしまおうと思い立った。自分で書くってだけなんだけど、こういうのって形式、体裁の問題で、オレ自身がインタビューを書いたところで、客観性があるように見えるもんよ。それと、高橋君は、ネットで本を宣伝する意義みたいなものをまだよくわかっていないので、説明するのが面倒でさ。出版物の価値を疑わずに生きてきた人の考え方を転換させるのは大変なんだよ。“インタビューをやってよ”と頼むと、たぶん高橋君は“だったら、どこかの雑誌に持ち込みましょう”って言うと思う。それはそれでやればいいけど、そんなに簡単にインタビューをやってくれる雑誌なんてないんだから、自分でやった方が早くて確実。なおかつ雑誌より自分でネットでやった方が効果もある」

——でも、第三者がインタビューした方がいろんな話を引き出せます。

「というので、このインタビューをやることになった。結果、君もカムジャタンの話とか、ガーナ人の女子高生の話とかをうまく引き出してくれている」

——アッキーナの話とか。

「それもネットでは大事なことなのだよ。『秘密のケンミンSHOW』に出ているあの女優が好きな人が検索して読んでくるかもしれないんだから」

——だからといって、『エロスの原風景』は買わないと思いますけど。

「いや、買う。もともとそういうところがあったんだけど、インターネットを始めてから、オレは数字至上主義だからさ。『秘密のケンミンSHOW』で検索して入ってくる人の中にも、エロ本が好きな人は必ずいる。100人だと1人もいないかもしれないけど、1万人だと1人くらいはいる。問題は1万人も入ってこないことだけど、そういったさまざまなワードをちりばめておくと、その集積で1万人になるかもしれない。そうすっと、1人買う人が出てくる。すべての無駄を集めた時には意味が出てくる」

——インターネットの特性ですね。

「無駄は決して無駄ではない。無駄の蓄積が意味を持つ。クズがあるから、世界は豊かになる。よくゲームをやりすぎるとゲーム脳になるなんてことを言いたがる、おかしな人たちがいるけど、オレはインターネットのおかげで、この世の中はポイント制のゲームなんだってよくわかった。もちろんそれでは割り切れない部分があるにしても、ポイントをどうゲットして溜めていくかだ。“ガーナの女子高生”で検索する人は一人もいないと思うので、ゼロポイントだけどさ(笑)」

——本を買ってもらうためには、もっと具体的な話をした方がいいと思うんですけど、『エロスの原風景』のアピールポイントはどこですか。

「……」

——なんで黙るんですか。

「想像もしていなかった質問なので虚をつかれた(笑)」

——新刊インタビューではもっともオーソドックスな質問なんですから、そのくらい想定しておいてくださいよ。

「本のアピールポイントとか、オレのチャームポイントとか、そういうことを聞かれると困るな」

——チャームポイントはけっこうです。

「インタビューすることは多くても、インタビューを受けるのは久々なので、緊張しちゃってさ」

——どこからどう見てもリラックスしまくってますよ。

「このところ、オレが考えているのは、“出版がどうなるか”“どういう手法でこの本を売ればいいのか”ってことであって、本の中身は忘れていたよ。本自体にはもう飽きているからさ」

(続く)

松沢追記:アマゾンでの予約数は44冊だった。通常予約は一桁なので、やはり「著者キャンペーン」の効果は絶大だったと言ってよさそうだ。

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松沢呉一『エロスの原風景』
江戸時代〜昭和50年代後半のエロ出版史 

定価=2,800+税
ISBN978-4-7808-0126-2 C0095
A5判 / 168ページ / 上製・函入り
2009年07月刊行
ポット出版